桃栗三年、柿八年と言いますが、これは木を植えてから実が成るまでの期間を表しています。そういう意味では漆の木は植えてから10年後にやっと漆を取ることができるようになります。
漆の木は、根元を残し伐採し、残った根本の部分からは新しい新芽が生え、再び10年かけて育ちまた漆がとれるようになります。このように漆の木自体が高度なリサイクル循環を持っており、無駄のない木として長いこと日本で重宝されてきました。
しかし、戦後高度経済成長と共に、安い輸入の漆が多量に日本に入るようになりました。その結果、国産の手間暇かかる漆の生産はコストが高く、また輸入品の安さに押されて、漆掻き職人が減少し、瞬く間に漆の木も減っていきました。
その状況を憂い、輪島では1970年から約20年の間にのべ約13万5千本の漆の木が植えられました。ところが、手入れ不足からその大半が枯れてしまい、今では約2,000本ほどしか漆の木は残っていない状況です。漆の木はただ植えるだけではだめで、日ごろの手入れも肝要なのです。
また漆の木から漆を採取する「漆掻き職人」も不足しており、今では輪島に2,3人ほどしかいません。またそれらの方も、漆掻きだけでは生活が成り立たず、農業と兼業されておられるのが実情です。
国産漆復活の為には、やみくもに漆の木を植えるだけでなく、漆の木を管理し、漆を採取する漆掻き職人への支援、育成も重要な課題なのです。私たちはこれらの事もよくよく考え、活動をさせていただいております。